ひとやすみ。。。。。
2008年 05月 26日
荻原 朔太郎
『月に吠える』 (1917)
猫
まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』
(「くさつた蛤」より)
『青猫』 (1923)
青猫
この美しい都会を愛するのはよいことだ
この美しい都会の建築を愛することはよいことだ
すべてのやさしい女性をもとめるために
すべての高貴な生活をもとめるために
この都にきて賑やかな街路を通るのはよいことだ
街路にそうて立つ桜の並木
そこにも無数の雀がさへづつてゐるではないか。
ああ このおほきな都会の夜にねむれるものは
ただ一疋の青い猫のかげだ
かなしい人類の歴史を語る猫のかげだ
われの求めてやまざる幸福の青い影だ。
いかならん影をもとめて
みぞれふる日にもわれは東京を恋しと思ひしに
そこの裏町の壁にさむくもたれてゐる
このひとのごとき乞食はなにの夢をみて居るのか。
(「幻の寝台」より)
ここには一疋の青猫が居る。さうして柳は風にふかれ、
墓場には月が登ってゐる。
(「さびしい青猫」のエピグラムより)
(〈青猫〉は、「物憂げなる猫」という田舎にいる心理状態を投影した像と、「都会の空に映る電線の青白いスパークを、大きな青猫のイメーヂ」とする切ない郷愁の表象の二重の意味をこめたものであった。)
いっぱいの コーヒーでも
片手に
昔のちょっと ほこりをかぶってしまった詩集を
手にするのもいいかもしれない。
たまには
何も考えずにね。
ちまたでは、猫鍋やら、、
何だか癒し系の猫ちゃんばかりだけれど
朔太郎の猫の詩も
ちょっといいでしょ??
明日からは夏を思わせるような陽射しになるそうです。
寒かったり
暑かったりね。
どうぞ、体調を崩されません様に。
ご自愛下さい。
ママ